自然素材で造る一級建築

かつて日本の家は木と紙と土で構成されていました。しかし、現代の家は化学物質がたっぷり含まれた新建材で覆われたカプセルのような住まいがほとんどです。そこから空気中に漏れ出してくる有機化合物がアトピー性疾患やシックハウス症候群などを引き起こし、健康を害している事が憂慮されています。

これらの新建材を全て排除することは困難ですが、できるだけ自然素材を使うことによって住まいづくりの全過程（製造、使用、廃棄）での環境負荷を小さくし、住まい手の健康にも寄与することができるのです。

本来、住まいはその土地の近くで生産される物をうまく使って建てられていました。そうする事で、その土地の気候風土にあった長持ちする住まいとなったのです。

現在は木材においては輸入材が多くを占めていますが、日本の気候風土の中では腐りやすく暴れやすいのです。国産材は輸入材と較べて幾分高いとはいうものの、工事費全体の中で木材費の占める割合は小さなもので、国産材をふんだんに使っても工事費の増加は案外小さなものなのです。
国産材を使うことで耐久性の高い住まいが手に入り、日本の林業を支え、環境保全にも貢献できます。

木造の平屋建て及び２階建ての建築において、現在の建築基準法の構造基準はかなり緩い基準となっています。そのため新築の家でも建築基準法をパスするための最小限の構造体、あるいはそれすらも守られていない家造りが案外多いのです。
阪神淡路大震災で被災した多くも、そうした構造的配慮の足りないものであったというのが事実です。バランスの良いしっかりした構造計画をし、現場での確実な施工が肝要なのです。

エネルギー消費をできる限り少なくすることは、経済的でもあり、地球環境を守る上でも必要なことです。気密性、断熱性も住まいの１つの性能ですが、魔法瓶のような家を造ったのでは決して快適な住まいとは言えないでしょう。
快適な住まいを造るには、自然のエネルギー（光、風　など）をうまく利用、コントロールする仕組みが大切です。そのためには綿密な平面計画、断面計画が必要なのです。

人生の内でおそらく最も高価な買い物をする割りには、多くの人が建築の性能やコストについてあまりに無頓着なのには驚かされます。ほとんどの人はそうした本当に知らなければならない情報を知らされていないのではないでしょうか。
建築家としてコスト、性能、デザインを建て主に説明することは当然の責務のはずです。そして、建て主の方も自ら材料を確かめ、建築の過程を勉強し、納得した住まいつくりをする事によって、愛着もわき、メンテナンスの大切さも理解し、住まい方自体も楽しく変わっていく、そんな住まいづくりが大切と考えています。